つまずきの石

一年ぶりに会う彼女。以前にもましてキレイになっていた。こんなキレイな女だったかなと見つめる時間が自ずと長くなる。

体のラインは変わらない。出会った頃はお互いに若かった。本当にこんな素敵な女性が自分を愛してくれていたのかな。あの頃の自分に嫉妬した。

私が贈ったものを身につけ、つかってくれた愛しい彼女。今ではすべて見覚えがなく、上質なものになっている。

レイヤーをうまく取り入れるファッションだけは変わっていなかった。

「風邪ひいたみたい、喉が痛くて」 すらりと伸びた指先を喉にあてがう。つややかな髪の束が流れ落ちた。

彼女を待たせ、精いっぱいの、やさしさをもって「これ使ったらよくなる」とヨウ素系スプレーを買ってきた。

「ほんとに効くの?」

「やらないよりかましだよ」

・・・・・・

「いいかも」 「ありがとう」

ベンチに座る。以前もしたことのある会話。そんなこと気にもしなかったのに、「前にもしたよ」と二人でにがく笑った。

これが最後とばかりに見つめあった。

「そこまで送るよ」

二人並んで歩いてく。

「手、握ってよ」

私が苦しめられた、この彼女の小悪魔加減。彼女の方が見られない。

「楽しかった、また誘ってよ」

「俺も楽しかったよ、今日はありがとう」

きっと私は誘わない、正確に言えば誘えないだろう。私はそのように彼女によって導かれるはずだから。

握った手が離れる、彼女は中指をわざと私の指先にひっかけた。いつでも思わせぶりなんだ。

「元気でね」

五歩進んで振り返ると、それから彼女も振り返った。「本当に最後だな」。彼女はほほえんでいた。私はもう一度振り返ってみたけれど、彼女が振り返ることはなかった。

(あんな風に歩いてたんだ)

凛とした、私につまずいているような女じゃない。これでよかった。自分にそう言い聞かせるのが精いっぱいだった。

ああ、またしても孤独に戻ってしまった。

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hajime

Author:hajime
ぜひ、高校生や大学生などの青年諸君に注意深く読んでもらいたい。むやみに多読する必要はなく、知識や思想の力があれば悩みに打ち勝つこともできるのだ。僕自身が高校時代から現在に至るまで苦悩と苦悶を繰り返しながら、懸命に人生について、「善く生きる」とはどういうことか、ということを真面目に考え、行ってきた事実をここに記している。その内容はきっと青年に役立つであろうと思わないではいられない。

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