意見の総括が思想である 歴史は英雄ではなく大衆がつくりだす


「元来意見があって、人がそれに則るのじゃない。人があって、その人に適した様な意見が出て来るのだから、僕の説は僕に通用するだけだ」

「多くの場合に於て、英雄とはその時代に極めて大切な人という事で、名前だけは偉そうだけれども、本来は甚だ実際的なものである。だからその大切な時機を通り越すと、世間はその資格を段々奪いにかかる。 (中略) 世間は隣人に対して現金である如く、英雄に対しても現金である。だから、こう云う偶像にもまた常に新陳代謝や生存競争が行われている。そう云う訳で、代助は英雄なぞに担がれたい了見は更にない。が、もしここに野心があり覇気のある快男子があるとすれば、一時的の剣の力よりも、永久的の筆の力で、英雄になった方が長持がする。新聞はその方面の代表的事業である」   『それから』より



人にはそれぞれ、自己流の思想というものがある。この自己流の思想を不可分なく認識し、正義や善にそぐわない部分を少しずつ是正していく必要がある。けれども、実際この自己流の思想を自覚している者は多くはなく、自由気ままに己の思想を成長させていく。その思想は当然のことながら自然と時代の風潮の影響を受け、自分の体験によって形作られる。そこには善に向かおうという姿勢もなければ、正義と干渉し合うところもない。神のみぞ知る、といったものでこの場合、聖者といわれるまでの高尚な思想をもつに至るのはほとんど不可能だ。思想というと、多くの人が敬遠したくなる概念ではないかと思う。だが、率直に言えば、意見の総括であり、自分の持っている森羅万象に対する意見を分析してみれば、自分が何を重視し、何に価値を見いだしているのかということは容易に見えてくる。これは自分自身だけではなく、相手に対しても言える。相手が何を求めているのかということは、言葉の節々に表れている。「人があって、その人に適した様な意見しか出て来ない」のだから、心配しなくてもよい、実はいかに意見を引き出すかということに頭を悩まさなければならないのだ。


僕もかつて血気盛んで、野心を燃やしていたときには、ナポレオンに憧れ、父が崇奉した所謂、経済的成功者を軽んじていた。他者に対して物質的優越を持つことが人生の目的であることに首肯することはできなかった。なぜだかわからないが、世界を幸福へ向かうように改善させることよりも、家族を幸せへ向かわせることのほうが圧倒的に価値のあることだというのだ。大小の違いこそあれ、とんだナショナリズムだ!ナポレオンが歴史上もっともすぐれた人間の一人だと信じて疑わなかった僕に、トルストイの『戦争と平和』は歴史は英雄によって作られるのではなく、民衆の生活と活動によって作られるということを教えてくれた。ナポレオンが直接その権力で動かせるものは大衆の力と比べれば微々たるものだったのだ。歴史上の人物も所詮、たまたま大きな出来事の象徴として据えられた看板に過ぎず、大した働きさえしていないことがわかる。結果的に意味付けや動機付けの段階で拵えられた都合のよい存在で、運や偶然によるところが大きく、そんな英雄になろうとして尽力するのはいかにも馬鹿馬鹿しい。英雄になるのではなく、賢者になることのほうが尊い。努力で英雄になることは難しいかもしれないが、努力で賢者になることは可能だ。ゆえに、賢者になるための努力を惜しまずにしようではないか。

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hajime

Author:hajime
ぜひ、高校生や大学生などの青年諸君に注意深く読んでもらいたい。むやみに多読する必要はなく、知識や思想の力があれば悩みに打ち勝つこともできるのだ。僕自身が高校時代から現在に至るまで苦悩と苦悶を繰り返しながら、懸命に人生について、「善く生きる」とはどういうことか、ということを真面目に考え、行ってきた事実をここに記している。その内容はきっと青年に役立つであろうと思わないではいられない。

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