発見 世界を、自然を知りたい。芸術はそれらの導き手にすぎない。


諸国民は建築物によってではなく、抽象的思考能力によってこそ、その名を後世に伝えようとすべきではあるまいか?東洋のあらゆる遺跡よりも、『バガヴァッド・ギーター』のほうがどれほど讃嘆に値することか!塔や寺院は王侯の奢りである。簡素と独立を尊ぶ精神の持ち主は、王侯の言いなりに働くものではない。天才はどんな皇帝にも仕えず、彼が用いる素材は、ごく少量を除けば、銀でも金でも大理石でもない。そもそもなんのために、あれほど大量の石材が槌で叩かれるのか?私がアルカディアにありしころは、槌で大理石を叩いている人間など見かけなかったものだ。諸国民は、槌をふるった大量の石材を残すことによって、その名を永遠にとどめようという、狂気じみた野心にとりつかれている。それだけの労力があるなら、それを彼ら自身の態度物腰の洗練にふり向けたらどうだろうか?一片の良識のほうが、月の高さほどもある記念碑よりも後世に残す値打ちがある。私は、大理石が本来の場所にあるのを見るほうがよっぽど好きだ。テーベの都の壮麗さは俗悪なものだった。人生の真の目的からはるかに逸脱してしまった百の城門をそなえたテーベの都よりも、正直な人間の畑を囲む一ロッドの石垣のほうが、よほど良識にかなっている。   『森の生活』より


この記事を読んでくださった方の中には以前の記事の内容から僕が旅好きで、国内であれば一般に名所と呼ばれているところのいくつかに足を運んだことがあることをご存知のことと思います。というのも、非常に嬉しいことに―ブログを書くにあたり、アクセスがどのくらいかということを多少気にしているのだが(なるべく多くの人に読んで欲しいし、そのくらい意味のあることを書いているつもりである)、もっとも気にしていることは何度か訪問をしてくださる、このブログに関心を持ってくださる読者がどういった方たちで、どのくらいそういった方がいらっしゃるのかということだ。幸い、FC2ブログには訪問者リストという便利な機能があって、FC2ブログユーザーであればその筆者と書かれているブログがどのようなものかわかるようになっていて、そこをチェックすることでどういった方がいらっしゃって、どういった考えの持ち主であるのかということを知ることができる―わずかだけれど、言葉をやりとりし、気持ちや思想の共有や共感、教えと励ましを与えてくださる先輩方が訪問者の中にいらっしゃるのです。右のリンク欄に書かれているブログが並んでいるのですが、どうかそちらもチェックしていただけると、どれも素敵なブログばかりです。

さて、前置きが長かったですが、そう僕は旅好きなのですが、一つ疑念を自分自身に抱いておりました。なぜ旅が好きなのか?ということ、そして名所を深く考えもせず訪れて、そのなかには豪華絢爛な、あるいは壮麗優美な建造物の類があるわけですが、これらに対してなんとなく違和感を抱いていました。けれども好き好んで日本であれば日光東照宮や京都清水寺などに行くわけです。すると疑念がどんどん強くなってきて、いや、こうしたものは本来見るべき、そして感動すべきものではないという思いに至りました。

建築物は造形美も包含している、しかしそこにはデザインにもいえることだが、抽象的思考能力、および思想心情に基づく能動的活動が見えないのである。実に苦しみや労力、困憊が隠れている。そうしたものを喜ぶということへの違和感だったのだ。そして僕は労働の目的の一つに、自由であったり、旅の実現を掲げていたわけであったが、一つ矛盾点が解消された。エジプトへ行ってピラミッドを見る必要も、中国へ行って万里の長城を見に行く必要も、そうした願望も消え失せたのである。僕はそれよりも、エジプトの果てしなく続く砂漠、中国の切り立った山々、そこを縫うように流れる大河、そうしたものを見るべきだし、本当は見たいのである。つまり問題が一段階下がり、手軽なものになった。とうとう移動の問題のみに課題が縮小されたわけで、わずかにより物理的な問題に単純化された。

旅がビジネスに汚染されて、華やかで贅沢で文明・人類礼賛という方向を取り、僕もまんまと洗脳されてしまっていた。本来見るべきことを感じながらも、概念としてそうしたものまでも持ち合わせてしまっていた。文明や人類の営みを僕は見たいのではない。人類はいつも愚かだ。負の歴史を今まで多く積み上げてきた。むしろそれらは疎ましい、不快感を伴うものだ。そうではない、世界を、自然を、知りたいのだ。芸術もそれらを知るための導き手であるにすぎない。印象派はやはり、美しい自然の風景や、自然の一部分としての人間の暮らしを描いた。文明や華やかな貴族趣味を描いたものなど見ても心を落ち着かすことなどできない。世界と自然、それを映し出す人間の心、その中で生かされている人間の営み、こうしたものを僕は知りたいのであった。

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hajime

Author:hajime
ぜひ、高校生や大学生などの青年諸君に注意深く読んでもらいたい。むやみに多読する必要はなく、知識や思想の力があれば悩みに打ち勝つこともできるのだ。僕自身が高校時代から現在に至るまで苦悩と苦悶を繰り返しながら、懸命に人生について、「善く生きる」とはどういうことか、ということを真面目に考え、行ってきた事実をここに記している。その内容はきっと青年に役立つであろうと思わないではいられない。

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