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山下の立場 小説「自由への道」43


大学研究棟のある一室、入り口の扉はストッパーで半開きになっているのでその前の廊下を通る者には内部の様子がわかる。白色の一般的なコンピューターが三台、壁を背にして備えられており、南側には離れて、大きな机に黒色のハイグレードなコンピューター、人間工学に基づいてデザインされた椅子がぴったりおさまっている品格漂う一隅があった。画集や論文などの資料がガラス製引き違い戸付きの普段見られぬほど大きな本箱にぴっちり納まり、それは部屋を狭く見せ、室内はやや照度が落ち、陰気な雰囲気を来訪者は感じるほどだった。

黒のコンピューター越しに、縁なし眼鏡をかけたいかにも神経質そうな瞬きをする教授が、普段への字に結ばれている口をあけたかと思うと山下を呼んだ。

「山下君、今度の学会で発表する数学とデザインについての論文の日本文化と白銀比の紹介資料を頼みたいんだが、研究の合間にできんか。」

突然のことだったので「はあ、いつまでにですか。」と山下は間抜けな返事をした。

「そうだな、週明けまでに。」

学生は教授の依頼を引き受けるのが当然といわんばかりにその教授は構えている。

「やっておきます。」と山下は席を立ちながら回答し、棚から資料を引き出して自分の研究を続けた。彼が所属したのは科学デザイン科でそれは数式や化学からデザインにアプローチすることであらたな科学的価値の創造をすることを主とした学問であった。だが彼は宗教や倫理とデザインの関係などといった科学ではなく人文から探求することを欲していたので、その教授の助手になる身とはいえ、そうした課題に対して吝かであった。彼は教授の学問的方面の助力に加えて、学校における教授職における方面でも代任することが少なくなかった。たとえば、教授が受け持つ講義に一緒に参加して、彼が板書し、口授している最中に学生の間をまわり、その進み具合をチェックしながら、質問を受け、実際に学生のノートに例やヒントを筆記して教えたりするのも彼の仕事であった。彼にとっては重荷でしかなかったが、後輩である学生に対しては真剣に応じていたため、いつからか慕われるようになっていた。
 

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hajime

Author:hajime
ぜひ、高校生や大学生などの青年諸君に注意深く読んでもらいたい。むやみに多読する必要はなく、知識や思想の力があれば悩みに打ち勝つこともできるのだ。僕自身が高校時代から現在に至るまで苦悩と苦悶を繰り返しながら、懸命に人生について、「善く生きる」とはどういうことか、ということを真面目に考え、行ってきた事実をここに記している。その内容はきっと青年に役立つであろうと思わないではいられない。

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