義務は人を地獄へつき入れるが、そこで人はそばに神を感じる 『レ・ミゼラブル』より


「人は幸福でありたいと欲するならば、決して義務ということを了解してはいけません。なぜなら、一度義務を了解すると、義務はもう一歩も曲げないからです。あたかも了解したために罰を受けるがようにも見えます。しかし実はそうではありません。かえって報われるものです。なぜなら、義務は人を地獄の中につき入れますが、そこで人は自分のそばに神を感ずるからです。人は自分の内臓(はらわた)を引き裂くと、自分自身に対して心を安んじ得るものです。」


「昔私は生きるために、一斤のパンを盗みました。そして今日私は、生きるために一つの名前を盗みたくはありません。」   『レ・ミゼラブル ヴィクトル・ユゴー著』


『レ・ミゼラブル』から読者は多くのことを見出すだろう。僕はこの作品に作者の人生そのものを見る。この言葉は誤解を生みそうであるが、僕が言いたいのは実体験であるとか、彼あるいは誰か特定の人物がモデルとなっているということではない。作者が自分自身から真摯に引き出そうとして、真に多くの魂のこもった言葉として得られたものが書かれているということだ。

読者の年齢や環境、思想傾向によってさまざまな捉えかたが可能であり、発見と感得がその都度ことなるという読書体験ができるであろう。歴史、戦争、革命、社会、政治、恋愛、親子、家族、罪悪、信仰、善悪、青年、老年、人生……

列挙したこれらの言葉はほとんどが意味を持たない。それがいかに描かれているか―、それは筆舌に絶するほどに巧みで濃密に描かれている。

しかしながら、やはり僕を魅了するのは、葛藤であり、運命への抵抗、苦悶と苦悩である。それは僕自身を反映しているがように思われ、励まし勇気付けてくれる。人間は己と同じ境遇に立つ者には親しみ、多くの活力をもらう。その事実が、たとえフィクションといえども、その想定しうる状態であるが故に、奮い立たせられるのである。

上に取り上げた箇所の前者は逆説的で殊勝な表現で、傑出した場面ではなかろうかと僕は思った。そして誰もが経験したことのある、人間的な矛盾である。

義務、それは「人間の義務」、「良心に従うという義務」、これを了解すること、義しき人間であろうと決意すること。これがどれほど苦しく、険しく、難しい道であるかということは、その道に身を置いて歩かなければわからない。だからこそ、ユゴーはそれを小説として表現し、見せてくれたのだろう。美しいとはどういうことなのか、優しさでもって傷つく、正直なることが馬鹿をみる。光とはすなわち影を持つことである。美しくあるためには、醜いものに立ち向かい、それを廃さなければならない!

罪のない人はいない―、これはもはや使い古され、ありふれた概念で、誰もが認めるところとなった、市民権を得た言葉であろうから、それを敢えて論ずるつもりはないが、ああ許されぬ、償えぬかつての多くの過ち…それは往々にして運命により与えられるものではないだろうか。まるで一生懸命にプレーしてエラーする野球少年のように僕たちは未熟なのだ。

「義しいことをしよう」それこそが最後の救いとなる日がきっとくる。

打ち明けることが義しい場合があれば、隠し通すことこそが義しい場合もまたあるのだろうか。ひた隠しにすること、それが周りの人々を傷つけず、穏便に人生を送るために必要であるならば、そうすべきなのか。それとも、それを敢えて打ち明けることを「レ・ミゼラブル」は暗に示しているのだろうか。彼はコゼットのため、ジャン・ヴァルジャンであることを隠していたではないか…。

僕は物語のフィナーレを前に自らに問い、考えてみた。そして今、感激と混迷がいりまじっている。それは僕にどのような効果を与えるであろうか!

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はじめさんへ

こんにちは!

  光とはすなわち影を持つことである。

いいですねえ!レ・ミゼラブルの核心であり,確信ですね。

ちょうど年始に,同じように光と影のことを考えて詩をかいていました
これを読んで,タイトルが(はじめ),になっちゃいました!!

ことしもよろしくおねがいいたします
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hajime

Author:hajime
ぜひ、高校生や大学生などの青年諸君に注意深く読んでもらいたい。むやみに多読する必要はなく、知識や思想の力があれば悩みに打ち勝つこともできるのだ。僕自身が高校時代から現在に至るまで苦悩と苦悶を繰り返しながら、懸命に人生について、「善く生きる」とはどういうことか、ということを真面目に考え、行ってきた事実をここに記している。その内容はきっと青年に役立つであろうと思わないではいられない。

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