書物の分類、読者を選ばない名作「星の王子さま」 小説「自由への道」 29

余談だが、書物は三つに分類することができると筆者は考えている。「文学」、「学術書」、「大衆向け娯楽本」の三つである。それぞれの定義づけは、特に「文学」とは何かということについては専門家にその任を譲りたいのだが、私なりの定義は「書かれたその時代の社会を反映し、人類やこの世界の普遍性を明らかにし、もしくは明らかにせんとし、人間精神の向上を促し、共感と感動を起こし、文字という唯一の手段によって芸術性をもっている作品」と仮にもしておきたい。「学術書」は「自然科学と社会、哲学・思想について論ぜられた書物」である。最後に「大衆向け娯楽本」はそれらに入らない、「遊びや娯楽要素のみからなるさまざまなジャンルの本」である。つまり「友情」は「文学」、「学問のすすめ」は「学術書」というように区別できる。

将来公務員に、できれば教員になりたいといった後輩と国立大に通い、そのまま進学して大学院、助教授とキャリアを積んでいこうと考えていた同級生に「学問のすすめ」を推薦した。現代のように教育機関が整備され、世界における国際情勢の主流である資本主義に乗り遅れることなく、先進国としてその地位を築けているのは福沢諭吉の思想なくしてはありえなかったと松本は考えていたので是非彼らには読んでみてほしいという気持があったのだ。

前に挙げた理由によってこれらを女性に勧めることは憚られた。

「「星の王子さま」はどうですか。それほど長くないですし、話もまったく複雑ではありません〔子ども向けにも出版されているものですから〕。展開も早く、社会風刺と読者への作者からの尊いメッセージもこめられています。将来、子どもたちに読んで聴かせたらきっと子どもたちにもいいだろうと思います。とにかくすてきな話です。」彼は人差し指を立て、それをやや傾けながら言った。

「聞いたことあるわ、「星の王子さま」。難しそうじゃなくていいわね。なんだか論文めいていたり、回りくどいのはあんまり好きじゃないから―。きっと読んでみるわね。」

藤井さんが勤務を終え、その一時間後に松本も職場を後にした。幾層にも重なる入道雲から強い日差しの一片がこぼれていた。太陽が南中を過ぎてもなお厳しい暑さは続いていたが、風は秋を含み始めていた。

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hajime

Author:hajime
ぜひ、高校生や大学生などの青年諸君に注意深く読んでもらいたい。むやみに多読する必要はなく、知識や思想の力があれば悩みに打ち勝つこともできるのだ。僕自身が高校時代から現在に至るまで苦悩と苦悶を繰り返しながら、懸命に人生について、「善く生きる」とはどういうことか、ということを真面目に考え、行ってきた事実をここに記している。その内容はきっと青年に役立つであろうと思わないではいられない。

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