小説「自由への道」 23


〔社長は会社を運営する、社員はその担い手であり、研修生はやがてプロゴルファーとなって所属しているゴルフ場の名を広める、いわば未来の広告塔で、バイトは彼らを支える小間使いのようなものだ。だから俺はトイレ掃除やボールの洗浄をやらなければいけない。これが俺に与えられた仕事なのだ。しかし、一緒に仕事をしているのだからバイトでない人もやっていいようなものだが…いや、彼らには彼らにしかできない事務や宣伝という特化した仕事がある。ゆえにそちらが優先される道理だ。みんなが嫌がる仕事をすすんでやることは尊いと思うが、それとは違う。やって当然であるし、それをさぼるのならば、それは罪とならないだろうか。〕

松本はなるたけその仕事に勤しんだ。だがむなしさを感じないではなかった。洗っても磨いても綺麗にならない便器、洗浄してもどんどん汚れ、傷んでいくボール。現状維持どころか、その悪化や劣化のスピードを遅らせるような仕事は成果がみえず苦しいものである。しかも手を抜こうが、一生懸命やろうが時給は変わらなかった。彼はどこにやる気と成果を見出せばいいのかわからなかった。それでも時々お客さんに声を掛けられることがあった。「ごくろうさん。」、「えらいねー。」、「ありがとう。」そうした言葉が出るときにはとりわけ喜びであった。だが世の中というのは、善いことよりも悪いことのほうがたくさんあるようにできている。いい客よりも厄介な客のほうが多いわけである。綺麗に設備を使ってくれる人よりも雑に使う人のほうがどれだけ多いことか。ごみを拾う人よりも捨てる人のほうが圧倒的に多い。だが考えてみると、そうした無教育で無作法な人たちがいるおかげで仕事のある人が社会には数多くいるというのが現実である。その証拠に町中にある公共物で清潔美化されているものはほとんど存在しない。松本はトイレを汚す人、タバコの吸殻をそこいらにポイ捨てしていく人たちに憤りを感じたが、その反面、自分がそうして汚された職場を清潔にすることを仕事としていたために、感謝もしなければならないような気がして釈然としなかった。

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No title

こんばんは。
興味深く拝見しています。
ところでひとつ想いがあるのですが・・・・

ブログは,毎日が独立したページですよね
いぜんHajimeさんは記事に丁寧にタイトルをつけて書いておられました。
あれは,自分の考えをとらえ,つたえる上で非常に効果がありましたし,わたしはその丁寧さが好きでした。
いまそれがないのはいささかさびしい気がします
これは小説,記事ではないので不要なことかもしれません。
それにこの短い文章で毎日載せるタイトルをつけるのは大変なことかもしれませんが,それを考えることは,表現力の鍛錬にもつながるかもしれません。
毎日載せていくことの必然性も,より深まるのではないかな,などとも考えます。あくまでわたしの,感じたさびしさをうったえただけですがw

ことしもまた徐徐に終わりにちかづいていきますねw冬が到來,風邪など召されぬようご自愛ください。 
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hajime

Author:hajime
ぜひ、高校生や大学生などの青年諸君に注意深く読んでもらいたい。むやみに多読する必要はなく、知識や思想の力があれば悩みに打ち勝つこともできるのだ。僕自身が高校時代から現在に至るまで苦悩と苦悶を繰り返しながら、懸命に人生について、「善く生きる」とはどういうことか、ということを真面目に考え、行ってきた事実をここに記している。その内容はきっと青年に役立つであろうと思わないではいられない。

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