小説「自由への道」 20


本田は控え室の隅に立てられた自分のキャディバッグから七番アイアンを引き抜き、スイング時のスタンスをとって脇を締め、コックのタイミングをくり返し確かめ始めた。

〔このタイミングでコック完了して、そのままトップまでもっていく。腰を切りながら右ひざのところに納めて、さばく。こういうことなんだな、きっと。〕

「松本さん、大事なのは納めてさばくことですよ。」本田がモーションを止めて得心が行ったという表情をした。

なるほど、彼がいわんとしたことは、人間の動作すなわち骨格と筋肉によって得られる方向や力の限定的作用に対して、適切に対象物を配さなければならないということであった。言い換えればこれは礼儀作法であり、基本動作、理に適う運動であった。たとえば食物を食べるという動作について言えば、人間の食べるための特性は口という器官でしか「食べる」を達成できないということである。食物はここではご飯としよう、茶碗に盛られたご飯があり、そのご飯を口まで持っていかなければ「食べる」を完了できない。ここで「納める」はどういうことかというと箸でご飯をつかみ、しっかりと口もとまでもっていくことであり、「さばく」とは口を開いて、その中へご飯を入れることである。読者はなにを当たり前のことを言っているんだと思われるかもしれないが、世の中のすべての物事はそのようにして首尾よく扱うことができるのだ。対応するためには備えと、構えが必要である。物語を書く上でもおおよそのあらすじを描く、そしてそれを文字に表す。納めて、さばく。それだけである。加えて、「さばく」ことは人間の行動原理に基づく動きを指すので、いかに「納める」かが問題なのだ。

タイムカードを定刻の五分前に押した松本を本田は控え室に引き止めた。

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hajime

Author:hajime
ぜひ、高校生や大学生などの青年諸君に注意深く読んでもらいたい。むやみに多読する必要はなく、知識や思想の力があれば悩みに打ち勝つこともできるのだ。僕自身が高校時代から現在に至るまで苦悩と苦悶を繰り返しながら、懸命に人生について、「善く生きる」とはどういうことか、ということを真面目に考え、行ってきた事実をここに記している。その内容はきっと青年に役立つであろうと思わないではいられない。

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