小説「自由への道」 19


アルバイトは学生のためにあるというのが日本では一般的である。学生は朝から夕方くらいまでを学校で過ごすため、通常夕方や夜の時間帯で働く。世の中は学生中心でまわって入るわけではないから、当たり前に朝や昼にも人出が必要である。そこを埋めるのはパートと呼ばれる長時間でかつある程度時日を固定された労働形態で、主婦やフリーターなどがその役を任じる。松本は分類するとすれば、フリーターとなるに相違なかったが、彼自身としては自分をそのようにみなすことにいくらか抵抗があった。それは単に体裁を意識するが故に起る感情であって、見栄のために働き生きようというのかと自ら諌めた。前に言ったとおり、五時間以上の労働は原則回避させてもらうことを直々に談判した。人手不足や、やむを得ぬ事情の場合はもちろんその限りでないから、頼みにしていただいて結構だということもあわせて伝えた。

彼が正午をまたぐようなシフトで入ると、基本早朝から正午までの勤務となっている研修生と仕事をすることになった。パートさんと一緒になるときには雑務をパートさんがいないときは受付業務をやる役回りであった。

「おつかれさまです。」と入ってきて挨拶をしたのは松本である。すでに受付にはパートの藤井さんが立っていて、控え室では研修生の本田が仕事中にもかかわらず、控え室に一台ある、事務用に準備されたパソコンでyoutubeに上げられた世界のトップに君臨するタイガー・ウッズや抜群のショット精度を誇るチャール・シュワルツェル、若手ナンバーワンの呼び声高いローリー・マキロイなどのスイング動画を自らのスイング理論の参考に分析していた。それらの動画は、スローモーションはもちろん他に解析つきのものまであった。ゴルフに限らず、世界のトップアスリートのプレーやフォームを誰もが手軽にネットやタブレット端末で視聴でき、それはより人々に感動と驚きを与えている。同時に彼らを目標とするアスリートにとってはよい参考ともなるのだ。

このゴルフ場には本田と松田、二人の研修生が所属していた。本田はエリート、松田は超エリートというふうに簡単に区別することができた。日本トッププロを数多く輩出した名門大学出身の先輩と後輩で、松田が学年二つ上の先輩であった。(ちょうどその間の学年が松本である。)知名度が全国区である裏づけとして、本田は東北出身、松田は九州出身であった。どちらもスポーツ選手らしく上背は一八〇センチを超えていて、本田はややほっそりしていて、松田はがっしりとした体型をしていた。どちらもエリートといった所以はジュニアの頃からそれぞれの地方では名の知られた選手で、松田に至っては全国大会優勝経験があった。

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hajime

Author:hajime
ぜひ、高校生や大学生などの青年諸君に注意深く読んでもらいたい。むやみに多読する必要はなく、知識や思想の力があれば悩みに打ち勝つこともできるのだ。僕自身が高校時代から現在に至るまで苦悩と苦悶を繰り返しながら、懸命に人生について、「善く生きる」とはどういうことか、ということを真面目に考え、行ってきた事実をここに記している。その内容はきっと青年に役立つであろうと思わないではいられない。

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