小説『自由への道』 11


週末の土曜日、松本の姿は彼の家の近くのファミレスで見つけることができた。その週が始まると中学時代の同級生である山下からメールで週末会えないかと誘いがあった。松本は無論、快諾した。今では恒例となっている近況報告を兼ねた談笑である。大体二、三ヶ月に一度のペースで膝を突き合わせる。山下は地元から少し離れた大学に進学し、現在もそのまま大学に残り院生として籍を置いている。そして長期休みや実家での用事を済ませるために帰ってくると必ずといっていいほど松本と会っていた。いつの日からか二人は深く、実のある話、議論をするようになった。二人は会うたびごとに互いの成長と変化を感じることができた。それはいい刺激であった。
同時にいい対照をなしている。ここまで松本が影のような存在として描かれてしまっていたが、ここで姿と形を与えられる。

山下は特徴的な風貌をしている。彼に会う人は誰でも彼の髪型に目を留める。黒髪でいることはほとんどない。松本が会うたびにその髪色と格好は七変化する。バイカラーであることがしばしばあったし、一度などは虹色グラデーションでアフロヘアーになっていたこともあってそのときは大いに彼を驚かせた。なぜだかそれは人間の好みの神秘といわなければならないが、山下は髪型にアイデンティティを持っていた。彼は元来目立ちたがり屋だったのでそう思ったのかもしれない。松本個人について言えば、そうした気を衒うことで目立ったり、人目を引くというのは賢い人間がやる振る舞いではないという感想を内心持っていた。当然友人である手前、そうした意見を提出することはできない用件だったが、できることならばそうしたセンスを持っていてほしいと考えなくもなかった。しかしながら、それが個性といってしまえば、それを尊重するのも友人の役割ともいえなくはないと合点した。加えて、スタイリッシュな眼鏡を常用している。彼は松本の中学時代の同級生で当時から仲がよかった。松本は覚えているが、中学三年時に山下はすでに近視がすすんでおり、眼鏡を掛けていた。彼も同じ野球部で三年夏に引退し、夏休みが明けると山下はいかにもやすっぽい風変わりな眼鏡で登校した。聞くと、韓国に旅行に行った際に激安店で購入したということだった。山下は眼鏡なんて見えればいいと言っていたが、今では高級ブランドのデザイナーズ眼鏡と価値観の変化を見た。縁が白く、流線型の最新式を思わせるモデルであった。体格は松本と変わらずやせぎすであったが―松本は仕事上ゴルフを日常的にやっていたので筋肉質ではあった―フリーサイズの袖口が肘にかかるほどのTシャツに裾がひどく傷んだスウェットを履いていた。着ているもののどこかで必ずプリントされたミッキーやくまさんなどかわいいキャラクターが笑っていた。口を閉じていても右の前歯がいつでも顔をのぞかせていたが、山下はそれをチャーミングだと考え、小ネタにすることさえあった。そんな独特な感覚の持ち主だから、彼はどういうわけか普通科の高校から迷いなく芸術大学へと進学したのだった。対して松本はというと、髪は混じり気のないアジア系の黒色であった。彼に言わせると髪を染めるお金があるなら、本を買うか、同じファッションで考えてもいいデニムでも拵えた方がいいとのことであった。彼も近視であったが、外出するときは必ずコンタクトレンズだった。彼の情熱と誠実さはその瞳からも読み取れた。凛として澄んだその瞳は自然と人をひきつけた。鼻筋が通り、意志の強さを表していた。夏場、彼はよくポロシャツで過ごした。ラコステやラルフローレン、フレッドペリーなど有名ブランドを愛用して満足感に包まれていた。ややスリムな履きこんだデニムはいい色味であった。

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hajime

Author:hajime
ぜひ、高校生や大学生などの青年諸君に注意深く読んでもらいたい。むやみに多読する必要はなく、知識や思想の力があれば悩みに打ち勝つこともできるのだ。僕自身が高校時代から現在に至るまで苦悩と苦悶を繰り返しながら、懸命に人生について、「善く生きる」とはどういうことか、ということを真面目に考え、行ってきた事実をここに記している。その内容はきっと青年に役立つであろうと思わないではいられない。

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