スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

小説「自由への道」 5


母の就寝は午前0時を過ぎることがなかった。そして翌日は誰よりも早く起床した。父の弁当を作り、父を会社へと送り出すことで母の一日は始まった。自分も仕事がある日はそれから洗濯などの大体の家事を済まして出社した。父は遅れること数時間、1時ごろ布団に入った。両親の寝室も二階にあったため、松本は二人が眠りについたのを家がひっそりしたことで分かるのだった。彼は毎日、随分夜更かしであった。それは翌朝になんの予定も持ち合わせていなかったからである。彼は学生であったか?否。彼は今流行のニートか?否。彼は働くには働いた。だが、それは自分自身の規範に沿う形で実現されていた。彼にとって眠りを目覚ましによって強制的に打ち破ることは多大なストレスであった。まだ眠りたいという欲求を押さえつけ、一日中眠気の残片を残して生活するのはなんとも不快であった。それが読書によって引き起こされる夜更かしによるものだということはわかりきったことであるが、彼にとっては読書することが生活条件の上位を占めていたので明日に備えて早く寝るということを請合うことができなかった。そういうわけで、彼は昼からの仕事、あるいは日が暮れてからの仕事しかしなかった。当然たまにはシフトの関係で早朝から入ることもあった。加えて、彼は九時間労働という画一的に社会で定められた労働時間に疑問を抱いていた。「人間には平等に二十四時間が与えられている。それの使い道は個人の自由である。」その決められた時間のなかの最低九時間を週に五日も献上しなければならないことにどうしても肯んずることができなかった。自らの生活を豊かにするための労働であって、自らの自由を損ない、抑圧し、苦しみのなかに飛び込むことは耐えられなかった。彼は正社員という手段を端から諦めていた。こうした思想は少なからずソロー著〔森の生活〕によって強められた。彼はそこいらの卒業を控えた学生が社畜にはなりたくないともがき、またそのつもりで学生生活をばか騒ぎのうちに過ごすのとは違っていた。彼は思想を究め、ゆるぎない信条を打ち立てることに身を砕いた。理想として彼は日に五時間ほどの労働を掲げた。働かざるもの食うべからずということには彼は大いに賛成した。むしろそのことは信じて疑わなかった。彼は働きたくないのではなかった。自由を欲していただけであった。自由に休みがとれて、形態も時間も自由な労働。それが彼の目指すところではあった。だが、それは不可能ではないにしても限りなく困難なことだということも彼には分かっていた。労働とは即ち、対価として賃金をもらう働きのことである。ゆえに、基本的にはその消費者、使用者の都合によらなければならない。もし労働する側の自由が成り立つとすれば、それは立場として労働者が上位にたつような特異性、唯一無二な存在でなければならない。彼はそれを求めて日々精進した。しかし、若い自分自身にたやすくそうしたものが手に入るとは思えなかった。彼はやむを得ず、近くのゴルフ場でアルバイトをしていた。そこは家から数キロのところにある国立公園内につくられたゴルフコースを管理している由緒或るゴルフ場であった。彼はスポーツが好きであったし、徹底した時間管理の下、通勤時間に多くを費やすことをよしとしなかったからだ。

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

hajime

Author:hajime
ぜひ、高校生や大学生などの青年諸君に注意深く読んでもらいたい。むやみに多読する必要はなく、知識や思想の力があれば悩みに打ち勝つこともできるのだ。僕自身が高校時代から現在に至るまで苦悩と苦悶を繰り返しながら、懸命に人生について、「善く生きる」とはどういうことか、ということを真面目に考え、行ってきた事実をここに記している。その内容はきっと青年に役立つであろうと思わないではいられない。

無料メールマガジン
メルマガ購読・解除
 
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

twitter
月別アーカイブ
最新トラックバック
最新記事
最新コメント
リンク
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
QRコード
QR
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。