夏旅 難しき女性との関係


僕の携帯電話は一日のほとんどは黙っている。

メールも電話もあまりしないし、インターネットはほとんどしないので、未だガラケーで今後も替える予定はない。

そんな携帯電話がブーブーと反応したから少なからず驚いた。

それは同じ高校の女の子でしばらく連絡をとっていなかった子だった。

「ひさしぶり 元気?」

特別な好意を持たぬ女の子から届くメールはたいがい用あってのことだとわかっているので、その次に来る本題に多少の期待を持って返信した。

「元気だよ。 Aも元気?」我ながらそつがない返信でなんらの感情も有していない、あくまで主体を相手に置かんがためである。

「Hくん、いま彼女いる?」

案の定、率直に本題に突入した。彼女の僕に対する淡白さも恐るべしである。

この種の問に対して、僕らは―まぁ男性一般としておこう、―彼女や恋人の有無に関係なく「彼女いない」ということにしておく。

チャンスを自らつぶす必要はないのである。

恋愛に合理性を求めるのは野暮で野蛮だが、恋愛の至上目的が愛を深めることではなく、最良のパートナーを見出すということであるならばいたしかたがないことだろう。

いないと伝えると、最近友達が失恋して傷心してるから誰かいい人紹介したくてその候補として白羽の矢が立ったのだ。

その相手がどういう人だかその時点では皆目見当がつかなかったので、当然期待もあったが―だが、あまり期待し過ぎないほうがいい―僕としては無論Aからのお誘いの方が好ましかった。

それは、今回はおくびにも出してはならないし、次の機会にゆずる方が懸命だと、冷静になれた。

最重要項目である容姿について(最低なことを、いとも簡単に!)かわいいのか聞くと、女性というものは正直でその答えは

「同じサークルの友達でおもしろい子だよ」ときた。

《かわいくないのかい!》とひとり突っ込む。

まぁ、彼女には彼女なりの自尊心もあるから、そこを掘り下げるのはやめておいて、百聞一見にしかず、写真を送ってくれるように頼む―いやはや、便利な時代である―。

「じゃあ、友達にもHくんの写真見せたいから送って!」と予想通りの答え。

まったく、したたかというか、損をしてたまるか、憂き目にはあわぬとの強い決意である。

交換条件を出されては、僕も提案した側であってみれば遠慮するわけにはいかないので要求に従った。

完全に当初望んだことではあるが、相手のペースに持ってかれている。

ここで自撮りを―忘れてはいけない、ここは旅先の旅館である―するのは気が引けるし、だいたい自分の紹介のために自分で自分の写真を撮るなんて恥辱だ。

データファイルにあった適当なものを「こんなかんじだったよね、俺?」とよくわからないコメントとともに送ると、「うん、こんなかんじだった。はい、隣の子ね」とAからも友達の写真が送られてきた。

ちゃっかり、自分もなんだかかわいく写っている写真で、ぜんぜん傷心の子よりもAの方がかわいいのでもうなんだかめちゃくちゃである。

「Aの方がかわいいね、うん。写真が悪いよ。もうちょっとかわいい子ならいけるけど、ちょっと厳しいわ、ごめん」

この上ない恐ろしく最低な断り方である。それは自分でも十分に理解している、しかし、はっきりと言わなければここまで進んでしまった以上、その子を彼女とする意志のあることと同義となってしまう。

「Hくん、なかなか言うんだね…わかった、ありがとう!」

といささか驚きと焦りの様子であったので、結局僕自身の株を暴落させて事なきを得たわけである。

うーん、女性との関係というものは難しい。

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hajime

Author:hajime
ぜひ、高校生や大学生などの青年諸君に注意深く読んでもらいたい。むやみに多読する必要はなく、知識や思想の力があれば悩みに打ち勝つこともできるのだ。僕自身が高校時代から現在に至るまで苦悩と苦悶を繰り返しながら、懸命に人生について、「善く生きる」とはどういうことか、ということを真面目に考え、行ってきた事実をここに記している。その内容はきっと青年に役立つであろうと思わないではいられない。

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