夏旅 立石寺


宮城県松島町の『瑞巌寺』、岩手県平泉町の『中尊寺』・『毛越寺』、山形県山形市の『立石寺(山寺)』で四寺回廊という松尾芭蕉の足取りに倣った巡礼コースが存在する。

それぞれの場所で俳聖・松尾芭蕉は優れた名句を読んでおり、それらはよく知られるところである。

そのような名作、傑作というのはその作者の能力、感性によるところが多いのはもちろんであるが、その起因、起源ともいうべき経験、事象、景観というのも並々でないに違いない、ぜひとも見聞きし、体感するために身を投ずるべきである。

四寺のうち、残すところ『山寺』のみであった。

前に記述したように、他の三寺で各々に趣の異なる感動を覚えたので、大いに期待しながら「山寺駅」に到着した。

といっても、前日のJR線運休のため、代行バスでの行程であった。

時間的ロスも感じなかったし、青春18切符も通常路線と変わらず利用できたのでJRのサービスの質に改めて敬服した。

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写真で捉えるのには無理があるほどの山上、岩頭にお堂が見えた。

急峻さもさることながら、そこに夥しく鬱蒼と生い茂る木々は下界と天界とを二分するに等しい景観であった。

修行なくして安寧なし―。

参拝する者は心して東北屈指の古刹に臨まなければならないならない。

1000段を超える石段は一念一歩するごとに煩悩と雑念を消す効験があるという。

途中、途中に諸堂が建立されており、見所に事欠かない。

岩壁と樹木と一体化せる土石、これらが入り乱れ、洞穴、隆起は数え切れず、かつて人はそこに霊験と信仰心を見出したのであろう。

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岩に巌を重ねたる上に立つ五大堂からの眺望は山形県のみならず古来日本の風景といったら言い過ぎだろうか。

汗の流れる首筋に山峡抜ける涼風が気持ちよく、一層際立つ静けさが心を洗う。

自然の表す姿、そこに順応し、従いながら謙遜の気持ちをもって生活を営んできた私たちの先祖。

自然に逆らって暮らすことのできぬことを改めて痛感させられた現代の人たち。


芭蕉の『立石寺』の編は秀逸であるのでここに示しておく。

『山形領に立石寺と云ふ山寺あり。

慈覚大師の開基にして、殊に清閑の地也。

一見すべきよし、人々のすゝむるに依りて、尾花沢よりとつて返し、其の間七里ばかり也。

日いまだ暮れず。

梺の坊に宿かり置きて、山上の堂にのぼる。

岩に巌を重ねて山とし、松柏年旧り土石老いて苔滑らかに、岩上の院々扉を閉ぢて物の音きこえず。

岸をめぐり岩を這ひて仏閣を拝し、佳景寂寞として心すみ行くのみおぼゆ。

 閑さや 岩にしみ入る 蝉の聲』  松尾芭蕉

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hajime

Author:hajime
ぜひ、高校生や大学生などの青年諸君に注意深く読んでもらいたい。むやみに多読する必要はなく、知識や思想の力があれば悩みに打ち勝つこともできるのだ。僕自身が高校時代から現在に至るまで苦悩と苦悶を繰り返しながら、懸命に人生について、「善く生きる」とはどういうことか、ということを真面目に考え、行ってきた事実をここに記している。その内容はきっと青年に役立つであろうと思わないではいられない。

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