夏旅 白河へ


宇都宮駅から再び電車で北上を続けた。

乗車後1時間ほどであろうか、車内で放送がかかった。

「この車両は矢坂駅にて車両の切り離しを行います。黒磯・白河方面へお越しの方は前方6号車から10号車にお乗りください」

というような文句が2回くり返された。

関東圏を越えて東北地方へ入ったんだなという気がした。

つまり人口が少なく、利用者も減るので必要な数の車両だけ残して運転するのだ。

自動に開閉していたドアも合図の後にボタンを押すことによる手動ドアへと切り替わる。

これも乗り降りする人が極めて少なくなるからである。

隣に座っていたお年を召したおばあさんが「すみませんが、」と僕に声を掛けた。

「車両の切り離しがあるようですが、この車両に座ったままでよろしいでしょうか?」

なるほど、今放送がかかったが、ややこもったように聞こえたのでお年寄りには聞き取りにくかっただろう、といって僕もこの車両が何号車で、移動する必要があるのかないのか分っていなかった。

ある程度僕はそうした場合を経験していたので、「矢坂駅」に近づいたら調べようと考えていたのだった。

しかし、こうして聞かれた以上は呑気にしてはいられないので、「えっと、そうですね、確認してみます」

と車両の連結部にあたる部分の上方を確かめてみると、9号車であった。

「このまま乗っていれば大丈夫ですよ」と僕が言ったら、おばあさんは目じりのしわを一層ふかくしてうれしそうな表情をして「ありがとうございます」とお辞儀をした。

「学生さんですか?」

「いいえ、一人で旅をしているんです。東北を回ろうと思いまして」

「そうですか、お気をつけてください」

「どちらへ行かれるのですか?」と僕が今度は尋ねてみた。出来るだけ丁寧に聞こえやすく。

「那須塩原まで行きます」との答えだったが、それ以上掘り下げるのはやめておいた。

小型のキャリーバッグを持っていたので旅行かとも思ったが、もしかすると親戚の家を訪ねるのかもしれない。

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hajime

Author:hajime
ぜひ、高校生や大学生などの青年諸君に注意深く読んでもらいたい。むやみに多読する必要はなく、知識や思想の力があれば悩みに打ち勝つこともできるのだ。僕自身が高校時代から現在に至るまで苦悩と苦悶を繰り返しながら、懸命に人生について、「善く生きる」とはどういうことか、ということを真面目に考え、行ってきた事実をここに記している。その内容はきっと青年に役立つであろうと思わないではいられない。

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