夏旅 宇都宮へ

『ことし元禄二とせにや、奥羽長途の行脚只かりそめに思ひたちて、呉天に白髪の恨みを重ぬといへ共、耳にふれていまだめに見ぬさかひ、若し生きて帰らばと、定めなき頼みの末をかけ、其の日漸草加と云ふ宿にたどり着きにけり。

痩骨の肩にかゝれる物、先づくるしむ。

只身すがらにと出立ち侍るを、帋子一衣は夜の防ぎ、ゆかた・雨具・墨筆のたぐひ、あるはさりがたき餞などしたるは、さすがに打捨てがたくて、路次の煩ひとなれるこそわりなけれ』  『奥の細道(草加)』より


今年、あの未曾有の大災害東日本大震災から2年経った平成25年に奥羽地方への長旅を軽率にも決心し―震災以後は行こうという気を起さなかった。ボランティアでもなんでもいいから力になることをできればよかったのだが、非情にも僕はなにもできなかった。このときになってテレビや街の広告などで東北を旅することが誰にでも出来る復興支援だということを知り、理解したので旅ならば僕自身の負担にもならずにできると思った―、遠い異郷の旅空の下で少なくない苦労と不便にさらされ、そのための忍耐を要することは決まりきったことなのだが、これまで噂には聞いているけれども、まだ実際には見たことのない土地を見て、無事帰れたらこれ以上の喜びはないと、少しの不安と大きな期待、喜びを抱いて旅立った。

朝早くにホテルを後にして、混み合った通勤電車に揺られながら、一路東北へ向かった。

Tシャツ1枚の僕の肩にかかっている荷物に、何よりも最初に苦労した。

僕はただ体一つで旅をしようと、旅支度をととのえたのであるが、薄手の上着1枚はいかなる天候の変化にも応じれるように、また折り畳み傘・移動中の電車内で読むための文庫本といったもの、これらが道中の苦労の種となったのは、どうにもいたしかたのないことである。

途中、宇都宮駅で休憩と共に昼食をとった。

駅ホームから階段を上がって改札に出ると、18切符を使用している僕は改札機ではなく、窓口を通らなければならないのでそちらへ歩を進めた。

前に2人並んでいたので、その後に並ぶと「日光線はどちらか分りますか?」と突然前にならんだ女性に振り向きざま尋ねられた。

こうして各地を電車を乗り継ぎながら旅する僕は知らず知らずのうちに路線名や駅構内の大体の構造などを把握してしまって、まるで駅員のように苦もなく「日光線はあちらで、向うに抜けていくとホームがありますよ」とその方角を指差しながら答えた。

たしかにそちらに視線を転じると「日光線」という案内板が見えたので、彼女は安心してそちらへ急いでいった。

知らない土地では右も左も分らないのが当然であるし、気安く声を掛けるのも憚られるものなので、このように頼みにされて声を掛けられるというのは喜ぶべきことであろう。

人に親切にすること、それがもし自分のあらかじめ持っている力や能力によって与えられることならば、これ以上うれしいことはなかろう。

宇都宮といえば、最近では『宇都宮ギョウザ』が全国で知られるようになっているが、浜松ギョウザにその人気を脅かされているそうである。

駅構内で見つけた『みんみん』というお店でギョウザをいただいた。

お昼どきを少し過ぎたくらいであったが、2,3人店外で待っていた。

JR宇都宮駅と融合されているホテル アール・メッツのロビーと同フロアの一角に店舗がある。

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主要なメニューがギョウザとご飯のセットのみであるのにはとても驚いた。

それほどギョウザに自信を持っているということであろうし、本来ラーメンなどのサイドメニューとしての役割でセンターを飾ることはないギョウザがこうして中心に据えられることは悲願の達成といっていいかもしれない。

あっさりとしていて、ニラやネギなどクセは抑えられつつ、野菜の食感は損なっていない。

肉も程よく肉汁をまとって豊かなうまみを野菜本来の旨味に重ねあわされている。

中華料理の域を超えた逸品であった。

ギョウザ専門店であるという特性は話題を呼ぶに値するだろうし、その名に劣らぬ品質は感心したが、ギョウザ一本で今後も厳しい外食産業を勝ち続けていくのは果たして可能だろうか。

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hajime

Author:hajime
ぜひ、高校生や大学生などの青年諸君に注意深く読んでもらいたい。むやみに多読する必要はなく、知識や思想の力があれば悩みに打ち勝つこともできるのだ。僕自身が高校時代から現在に至るまで苦悩と苦悶を繰り返しながら、懸命に人生について、「善く生きる」とはどういうことか、ということを真面目に考え、行ってきた事実をここに記している。その内容はきっと青年に役立つであろうと思わないではいられない。

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