夏旅 『東京スカイツリー』アジア人らしい設計と日本人の色使い

この日は18切符を使わない観光、見物の1日であった。

横浜からの移動と、東京都内の観光に電車を使うには使ったのだが、通常運賃で利用した。

明日は重要目的地である『平泉』へ到達するためにできるかぎり近づいておきたい―東京から平泉まで行くとなると半日ほどかかってしまうので、その日に見物することは難しかった―ので移動日とすることにした。

青春18切符での旅を充実したものにするための一つの手段として移動日と観光日を分けるということがある。

単純に2300円で1日乗り放題ならばたくさん乗ったほうが得でだからだ。

もっとも遠くまでの旅の場合に限るし、この切符のもう一つの特徴は途中下車できることなのだから、その利点を使ってさまざまな場所に降り立って、そこらを散策するというのも大いに結構だ。

先に言った、移動と観光を分ける方法は、宿泊がもれなくついてくることになるので、そのバランスがどうかについて考える必要もある。

さて、明日が移動日と決まったからには、この日のうちに明日の移動距離を少しでも縮めるために宿泊する場所を考えなければならなかった。

調査、検討の結果、「南千住」がその条件に適していた。

僕はこの旅を松尾芭蕉の『奥の細道』の影響の下、それに幾分なぞらえるかたちで始めた。

そして偶然にもこの「千住」という地は『奥の細道』(旅立ち)の中にこのようにでてくる。

『千じゆと云ふ所にて船をあがれば、先途三千里のおもひ胸にふさがりて、幻のちまたに離別の泪をそゝぐ。

 「行春や 鳥啼き 魚の目は泪」』

船でなくして電車を下りた。

先途三千里はおおよそどのくらいなのであろう。

その程は分らないが、僕にとってもそれは文明の力を借りるとしても遠い道のりであった。

見送るものとてなかったが、「南千住」駅から歩道橋で線路を越えようとすると闇とかすむ雲に覆われて『東京スカイツリー』が立っているというよりも浮かんで見えた。

周囲との遠近感を失うほどに立体的で巨大に見えた。

深夜の街灯に羽虫が寄り集まるように僕もその光の方へ吸い寄せられていった。

しかし、歩けども歩けども一向に近づく様相を呈さなかった。

考えてみれば、これは予期せぬ逢着であったので浅草の方まで歩いてきて、とある公園で『スカイツリー』を見上げて帰ってしまった。

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「どこの世界にきてしまったのかなぁ、よくもまあこんな不釣合いなものをたてたものだ」

大都会に立つならまだしも、当然かもしれないが、少し離れたところであるためひとつ轟然とそびえているのは興ざめであった。

アジア人らしい設計と日本人に似つかわしい繊細な色使いで構成されているため建造物としての価値は高いと感じた。

もっとシャープに、あるいは独創性をもってもよかったが、あえて均整と素朴さに徹したようである。

こうした高さを競うような建物は後につくるものが次々に最高を更新していくのであまり意味がないようであるが、技術力やデザイン性で計る意味はありそうである。

何にしても、洗練されたデザインには違いないだろう。

 
泊まったビジネスホテルは4畳ほどの一室でベッドと小机、テレビが棚に収められているのみであった。

しかし、眠るだけであるから、それで十分である。

浴場はあったし、ランドリーもあったため、貴重な一枚の下着を入念に洗濯した。

洗濯が仕上がるまで眠ることができなかったことと、下着を着けずに眠ることが苦痛であったが、自業自得である。

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hajime

Author:hajime
ぜひ、高校生や大学生などの青年諸君に注意深く読んでもらいたい。むやみに多読する必要はなく、知識や思想の力があれば悩みに打ち勝つこともできるのだ。僕自身が高校時代から現在に至るまで苦悩と苦悶を繰り返しながら、懸命に人生について、「善く生きる」とはどういうことか、ということを真面目に考え、行ってきた事実をここに記している。その内容はきっと青年に役立つであろうと思わないではいられない。

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