夏旅8 赤レンガ倉庫にて


夏旅の記録がすっかり頓挫してしまっていたのだが、夏は何かとイベントが多いし、気持ちも高揚しがちということである程度やむをえないところである。

合間を見つけて記述していこうと思うのだけれども、それまでに立て続けに特筆すべき出来事にであったり、気の利いた思想的筋道を発見したりして気がまぎれてしまうことも多かった。

山下公園から埠頭に沿って赤レンガ倉庫までぐるっとめぐったことを書いたはずなので、そこからまたはじめようと思う。

港町は時代とともに姿を変え、栄枯がはっきりしており、とどまるところがない。

往年を偲ばせる建築物が残されていたりすることによって、時代を感じないでもないが、横浜はセンスを伴って発展してきているように思う。

赤レンガ倉庫は前述のとおり、趣向の異なる2棟からなる。

2号館の1階、表側の店舗は飲食店として使われていて、日を取り込む工夫をされたテラス席で多くの人々が昼下がりのひと時を楽しんでいた。

ガラス張りの囲いの丈夫には通行人に向けたミストが噴射され、わずかながら涼まで提供していた。

商業施設に似つかわしくない出で立ちであったが、横浜らしいしゃれたおみやげがないかと僕もそれなりの目的をもってやってきたのだった。

革製品やバスアメニティーを販売するお店など種々さまざまあったが、そっくり意に適うものを見つけ出すことはできなかった。

おみやげを探し歩いて疲れたので、いやでも気を引かれたテラスで昼食を取ろうと、店先に張られた広告の冷製パスタが食べたくなって、カジュアルなレストランに入店した。

お1人様のお客はおらず、1人バックパッカーでご来店は僕のみであった。

はじめは少し気恥ずかしい感じもしたが、休憩と快適さにすっかり場になじんでしまった。

オーガニック食材を売りにしたレストランであるようで、フレッシュな野菜をふんだんにつかったサラダ、パスタは彩りも鮮やかで、味覚のみならず視覚も楽しませてくれた。

ほのかに野菜それぞれのもつ香りもただようほどに新鮮であるよう思えた。

空いた向かいの席にリュックを置き、一人で食事していると、隣の4人がけテーブルに3人が連れ立って入ってきた。

その一人が席に着くやいなや、

「スミマセン、シャシン、イイデスカ?」と僕にふりむいた。

かたことに話すその人はアジア人のようであった―ニホン人には見えなかった。

「OK、OK」

僕は戸惑いながらすぐさま、笑顔をつくり、要望に答え、予備も合わせて2枚撮影した。

2人の夫婦と添乗員の役割を果たす、知人か友人の年齢は60くらいの男性であったが、彼らが僕に礼を言ったあと
の男性がこう話しかけてきた。

「旅ですか?いいですね」

「ええ」とにっこりする僕。

「あなたがたも旅行中ですか?午前中はどちらへ?」

「ラーメン博物館へ行っていました。

実は私、横浜は初めてで、これからどうしようかと思ってるところです」

「天気もいいですし、散策すれば素敵な時間が過ごせるでしょうね」

2人の夫婦がその男性に席に着くと案内のお礼に渡したお土産の一部を僕に一つ分けてくれた。

「シャシン、アリガトウ。タイワンノデス」

と僕に台湾をかたどったしおりをくれた。

男性とその夫婦は英語でやりとりをしていて、時々僕にも彼を通じて話しかけてくれた。

「台湾いったことがありますか」

「一度いったことがありますが、小さい時分だったのでよく覚えていません」とつたない英語で話すと理解してくれたようで、うれしかった。

中国語が話せるかきかれたが、I can't と答えなければならないのはなんとも忍びなかった。

旅先でのこうした出会いは本当の人間同士の関係、利害関係なしの純粋な交わりという感じがして好きだ。

互いに何も知らないが、一定の敬意と親しみをもって接するので、それはすばらしいのだ。

僕は思い出したように、時分のリュックから文庫本を一冊取り出すと、

「僕は読書が好きです、ほらこうして本を持ち歩くほどです。

なので、あなたからのしおりのおみやげは僕にとって、とてもうれしい贈り物です」

との意味を伝えた。

今、そのしおりは物語の続きを僕に教えてくれている。

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プロフィール

hajime

Author:hajime
ぜひ、高校生や大学生などの青年諸君に注意深く読んでもらいたい。むやみに多読する必要はなく、知識や思想の力があれば悩みに打ち勝つこともできるのだ。僕自身が高校時代から現在に至るまで苦悩と苦悶を繰り返しながら、懸命に人生について、「善く生きる」とはどういうことか、ということを真面目に考え、行ってきた事実をここに記している。その内容はきっと青年に役立つであろうと思わないではいられない。

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