僕の好きな水晶浜


僕は毎年夏に福井県、若狭湾の水晶浜に海水浴へ行く。

のんびりいっても3時間弱で着くし、アクセスも良い。

日本海に面した湾内なので波も低く、透明度の高い海だ。


米原JCTから北陸道へわたって福井県中ほどの敦賀ICで下りる。

米原といえば、東海道本線の乗換駅として度々利用する米原駅もあるので、なんとなくなじみがあるし、旅気分にさせてくれるところである。

雪に慣れていない僕にとって冬の北陸道というのは一抹の不安を心に感じる道路であるが、夏であればさわやかな山岳地を抜ける気持ちのいい高速道だ。

やや路面が古くなっているところもあり、いい具合の寂れ加減なところがあり好きである。

木之本ICを通ると、冬場はだいたいここでチェーン規制が始まるので、冬を思い出さずにはいられない。

敦賀ICを下りて、敦賀市街方面へ向かい、気比の松原を縫うように走る。

敦賀気比高校が甲子園の常連校であるし、名勝としても知られる松原である。

突き当たりにあるファミリーマートが目印で、そこを右折し、敦賀湾に面し、それを右手にみながらやや傾斜のある上りの道を行って、再び平地に戻ったら峠方向に向かう道がある。

そこにはまだ建設されて時間を経ていないことが外見からも分かる馬背峠トンネルと名の刻まれた、コンクリートが風化していないトンネルがひっそりと口をあけている。

夏の海水浴、および釣りのために設けられたトンネルであろう、僕たちはその恩恵を大いに受けている。

暗いトンネルを抜けると、夏の日差しが一段と強く、厳しく感じられ、周囲を夏の風になびく青々とした緑の木々、草が囲んでいる。

前方に続く一本道はすぐにT字路になって、砂浜が見えてくる。

駐車場500円、すぐに着替えて、無料で利用できる電動空気入れで即座に浮き輪が適度なやわらかさをもって膨らむ。

こうした手際にも大変なれたものだ。

海の家の前方の砂浜にはパラソルや簡易テントが多く並んでいるから、そこから少し離れたところにパラソルを差した。

流行の歌から、ブルーハーツ、夏の定番曲が絶えず、その海の家から波の音とともに伝わってくる。

砂浜はじりじりと熱を持ち、寄せては返す小波がわずかに涼を演出する。

細身の鮮やかな色や流行の形をしたビキニの女の子が多いが、健康的な肉付きの女の子も少なからずいた。

思いのほかカップルで来る若者よりも、グループや同性同士が多かったのは意外だった。

遠浅の海だから海底が多少透いて見える。

空は青く、高い。

雲が流れて、時々ウミネコが砂浜に影を落とす。

湾を取り囲むように砂浜が続き、左手には海上にとびだした岩山、右手には美浜原発がせり出した向こう岸にみえる。

そうした夏の風景を海に迫る小高く連なる山が支えているような景観が好きだ。

しばし海の真ん中に浮かび、人生を考えてみた。

関連性はわからないし、ないのかもしれないが、なんとなく村上春樹が浮かんでくるのだ。

つまり、若いということと、自由ということ、独立、不安定な、中途半端な状態。


『僕はつまり自由なのだ。

楽しみと自由は同等で、その権利が僕にはある。

しかし、人は贅沢を慰めとして、苦しみを前提として考えてしまっていはしないだろうか。

僕らはみな海に浮かぶ、一存在なのだ。

楽しみは一見、無為に見えるその一瞬に存在しているのだ』

彼女の肌はまだ若かったから、水をはじいていたし、丁寧に日焼け止めを塗っても腕や首筋は日に焼けて赤く染まっていた。

海中で重力から逃れられた乳房は自然と美しい形を保っていて、白く輝き、水滴をいくつかとどまらせるほどやわらかさも持っていた。

彼女はおにぎりや塩分の含まれた清涼飲料水を僕の好みに合わせて用意してきてくれていた。

パラソルが落とす影の中にある、それらを入れたクーラーボックスと敷物を目印にして、沖に流されては戻るをくり返していた。

僕は潜りたくなって、潜った。

若くて、弾力のある筋肉を感じたくて、クロールで足のつかないところまでいってみた。

彼女は頻りにふたりの写真と、時々刻々に変わりゆく海を撮っていた。

陸に上がると僕はすぐにお気に入りのレイバンのウェイファーラーをかけて、自分の視線の行方が自分だけのものになる安心感を得て、ビーチを見回して、ときには女の子のお尻を追っかけたりもした。

僕もいつまでも若くはないし、彼女らもまた同様に年を取り、その麗しさも輝きも褪せていくだろう。

その埋め合わせを僕らはなにによって果たしていくのだろう。

太陽は夏になれば、いつでも厳しく照りつける、今も、これからも。

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hajime

Author:hajime
ぜひ、高校生や大学生などの青年諸君に注意深く読んでもらいたい。むやみに多読する必要はなく、知識や思想の力があれば悩みに打ち勝つこともできるのだ。僕自身が高校時代から現在に至るまで苦悩と苦悶を繰り返しながら、懸命に人生について、「善く生きる」とはどういうことか、ということを真面目に考え、行ってきた事実をここに記している。その内容はきっと青年に役立つであろうと思わないではいられない。

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