自滅的な恋


『おれはな、おめえが目の前からいなくなると、すぐにおめえが憎くてたまらなくなるんだよ、レフ・ニコラエヴィチ。

おめえに別れててから三か月のあいだ、おれはのべつおめえのことで腹を立てとおしていた、ほんとのこった。

もうおめえをひっつかまえて、何か毒でもくらわしてやりたかった。

そんなふうだったよ。

ところが、いま十五分といっしょにいないうちに、いつの間にやら腹の虫が納まっちまった。

そして、おめえがもともとどおりかわいくなっちまったよ。

もっといてくんな……』   『白痴』より


僕は彼女を家まで送り、家の前に停めた車内でいくらか言葉を交わした後、彼女と別れる。

彼女は「またね」と言う。

僕はうつむきながら「またねー」と少し気のない返事をする。

≪もう、会うまい……≫

彼女が目の前からいなくなるとすぐに彼女がいやな女にみえてくる。

会わないあいだ、彼女のいった言葉やわがままばかりを思い出し、彼女の謙虚さの足りなさに失望しては、彼女と一緒にいたところでなんにもならないじゃないかという気になってくる。

僕の経験から導き出された女の特性というものは、『優しく接すればつけあがる』だ。

彼女もその例にもれず、身勝手を増長しては僕を傷つけた。

僕はウサギが自分の布でつくられた寝床を噛み千切ってぼろぼろにしてしまうことを思い出した。

「その布の気持ちだ」僕は現にそう彼女に伝えたことがある。

そんなことをお構いなしに平常どおり連絡をよこす彼女を何度か無視した。

僕なりの腹いせだ。

すると彼女は卑屈になって、ふさぎこむようになり―そのことがなぜか僕には感じ取れてしまうのだ―僕の不憫の念が頭をもたげてくる。

そして慰みのつもりで彼女に会うのだが、十五分と一緒にいないうちに、いつの間にやら彼女に対する負の感情が納まってしまう。

そして彼女がどんどんかわいく思えてくる、以前よりもっとかわいく。

僕は不幸な感情の持主なのだ。

こうして彼女にどんどん付け上がることを許しては、僕は恋にのめりこんでいってしまう……

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hajime

Author:hajime
ぜひ、高校生や大学生などの青年諸君に注意深く読んでもらいたい。むやみに多読する必要はなく、知識や思想の力があれば悩みに打ち勝つこともできるのだ。僕自身が高校時代から現在に至るまで苦悩と苦悶を繰り返しながら、懸命に人生について、「善く生きる」とはどういうことか、ということを真面目に考え、行ってきた事実をここに記している。その内容はきっと青年に役立つであろうと思わないではいられない。

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