万座温泉『豊国館』 温泉と対峙、そして無


栃木県まで行ったので、僕はぜひ念願の『草津温泉』へと行きたかった。

「いや、せっかく車で来ているのだから、もう少し秘湯を目指そう」

ということで、

山上の温泉、『万座温泉』を目指した。

辺りはすっかり暗闇に包まれ、連続する急カーブに一層の注意を払った。

車はどんどん山上へむかって上っていく。

窓を開けるとかすかに硫黄の臭いが車内から確認でき、硫黄分の強い温泉が近くにあること想像に難くなかった。

その臭いはだんだん強くなっていった。

車内で夜を明かし、朝風呂に入れてくれる温泉宿を探したのだが、どこも営業時間前であったり、日帰り入浴をやっていなかったりでなかなかみつからなかった。

大きなホテルを少し下ったところにやや古びた温泉宿がたたずんでいた、旅館『豊国館』である。

のちに僕はこの宿が偶然にも僕が愛する、温泉遺産を守る会に登録されている宿であることを知った。

まったく、運命というかなんというか、幸運であった。

さびれてはいたものの、不潔さや汚さはあまり気にならなかった。

雰囲気と湯治場ともいうべき自由なスタイルがそうさせたのかもしれない。

003.jpg

前方には荒い山肌や峰が広がり、大げさに天空の温泉といってしまおう。

湯が滑らかかつ上質で、湯船の年月を経た色味やつくりによるいかんともしがたい老朽も眼中に入らないほどただ温泉と対峙していたのである。

不思議とのぼせるような感覚に陥らず、こんこんと湧き出る温泉に体をゆだね、思考は無であった。

これほどまでにのびのびと、自由に心身がニュートラルの状態で温泉につかることはなかなか難しいのではないかと思う。

そういう意味でも、この温泉は貴重だと感じた。

ほとんどの温泉宿は娯楽としての温泉を取扱っているのであって、湯治のための温泉というのと明白に異なるということを実感することができたのはよかった。

娯楽要素はきわめて低いといえるが、心身を整え、正すという意味で抜群の宿ではなかろうか。

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Author:hajime
ぜひ、高校生や大学生などの青年諸君に注意深く読んでもらいたい。むやみに多読する必要はなく、知識や思想の力があれば悩みに打ち勝つこともできるのだ。僕自身が高校時代から現在に至るまで苦悩と苦悶を繰り返しながら、懸命に人生について、「善く生きる」とはどういうことか、ということを真面目に考え、行ってきた事実をここに記している。その内容はきっと青年に役立つであろうと思わないではいられない。

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