「映画」と「原作小説」の相互関係 映画『レ・ミゼラブル』より

映画『レ・ミゼラブル』を見るべきか見ざるべきか、僕は迷惑していた。

小説を愛する者ならば誰もが問わずにはいられないテーマ、「映画」と「その原作の小説」の解釈と相互関係についてである。

もちろんこの映画の原作はヴィクトル・ユーゴーの同題小説であり、僕はその作品に大きな感銘と感動を受けた。

それゆえに僕の脳内イメージには自分なりの『レ・ミゼラブル』の世界観、人物像が形作られていた。

それが「映画」を見ることによって歪められてしまわないか、印象が薄れてしまうのではないか、そんな恐れを抱いていたのだ。

結果を言ってしまえば、僕は映画『レ・ミゼラブル』を見に行った。

そして、感動のあまり終盤には涙をおさえることができなかった。

なぜ、どういったわけで見に行こうと思ったのか?

それはこの映画『レ・ミゼラブル』がミュージカル版を基調としていること、映画のもっとも優れている点と僕自身考えている、映像と音楽の劇的な効果、特に『レ・ミゼラブル』中で流れる『I Dreamed a dream』は僕が好きな楽曲の一つで、それを期待していたからだ。

これらは見事な結実を見せていた。

さて内容についての感想に移るが、原作を読んでから少し時間が経っていたので、苦慮していたような脳内イメージと映像の相克は起こらず、それどころか以前の記憶を蘇らせることに一役買ってくれ、以前の印象を鮮やかに革命などの知る由もない場面の雰囲気や歴史的背景を脚色してくれた。

この物語は一本のパンを盗んだために徒刑囚となった男が苦悩や葛藤と戦いながら、正しき人として生きようとし、その末、聖人として生涯を終えるというものだ。

あまりに壮大で偉大で、筆舌に尽くしがたい傑作で何を語ればよいか判断がつかないので、今回の映画を見ることで新たな発見であったことを書いてみようと思う。

原作を知らない者にとって作品中もっとも衝撃的な出来事は「ジャヴェール」の自殺であろう。

なぜ彼はジャン・ヴァルジャンを救った末に自殺へと向かわなければならなかったのだろうか?

彼は法律を自らの絶対規律とし、まさに法の番人であった。

法に背くものを悪とし、法を信奉することこそが生きる指標であり、支えであったのだが、ヴァルジャンの正しき行いに直面し、そして自らの信奉する法が、結果的に屈してしまったことを自らの行動によって実感することになる。

彼はそのとき、良心の正しき行い(善)が法に勝るという声を聞いた。

一方、彼の理性、頭脳は法を遵守するより他に生きていくための希望をゆだねるものを知らなかった。

それゆえに神を信じること、そうした善に生きることができなかった。

同時に法を今まで通り信じて生きていくことも不可能であった。

良心の声というのは常にささやき、次第に大きくなっていく。

そして彼に残されたものは絶望のみであった。

キェルケゴールの『死に至る病』のようなものかもしれない。

人生という深淵を照らす信仰を失った彼は闇に葬られざるを得なかったのだ。

この一場面に込められたメッセージを僕はこのように受け取ったのだが、やや大仰だろうか?


そして最後に、終盤の革命のシーンで、僕は少し前まで学生の身であり、革命や抵抗、理想の追求を望み、若き情熱をもつ権利があったことを思い出さずにはいられず、彼らのひたむきな姿、友との信頼に胸を熱くせずにはいられなかった。



戦う者の歌が聴こえるか? 

鼓動があのドラムと 響き合えば 新たに熱い 生命がはじまる

明日が来たとき そうさ明日が!

列にはいれよ 我らの味方に 砦の向こうに 世界がある
 
戦え それが自由への道

戦う者の歌が聴こえるか?

鼓動があのドラムと 響き合えば 新たに熱い 生命がはじまる

明日が来たとき そうさ明日が!

悔いはしないな たとえ倒れても 流す血潮が 潤す祖国を

屍超えて 拓け明日のフランス 

戦う者の歌が聴こえるか? 

動があのドラムと 響き合えば 新たに熱い 生命がはじまる

明日が来たとき そうさ明日が!

歌は心の慰みともなるが、時には人びとの心を一つにし、気持を鼓舞し、勇気を与える。

そのシーンは『Do you hear the people singing? 民衆の歌』によって一体感とその感動を至高のものにしていた。

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hajime

Author:hajime
ぜひ、高校生や大学生などの青年諸君に注意深く読んでもらいたい。むやみに多読する必要はなく、知識や思想の力があれば悩みに打ち勝つこともできるのだ。僕自身が高校時代から現在に至るまで苦悩と苦悶を繰り返しながら、懸命に人生について、「善く生きる」とはどういうことか、ということを真面目に考え、行ってきた事実をここに記している。その内容はきっと青年に役立つであろうと思わないではいられない。

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