一人旅 温泉にはじまり、温泉に終る

正午前には水戸駅のホームに立っていた。

偶然、近くのビルにはいっている、中野に本店をおくラーメンの名店『青葉』を発見した。

僕は矢も盾もたまらず、開店直後に食券を手に、暖簾をくぐった。

お昼時には満席になるであろう店内も、僕についで数名入ってきていただけだったので、すぐにラーメンが運ばれてきた。

ラーメ~1

今まで食べたラーメンの中でもっとも見た目が美しいラーメンであった。

器の縁の青磁色と薄小麦色のスープ、平のりが両者の架け橋となって全体を引き締めている。

このスープ、コクがあるのにくどくなく、あっさりしていてしっかりとした味。

シンプルであるが絶妙なバランスで味が調和していた。

濃いラーメン=うまいという等式が成り立つように思いがちであるが、本当にうまいラーメンは味の深みを味わえるようなあっさりしたものであると確信した。

東北の厳しい寒さから逃れ、ビルのすきま風が温かく感じられた。

気がつくと、この一週間で日差しが身を包むようにやわらかになり、春がすぐそこまできていた。

水戸駅のホームで僕は少しばかり悩んでいた。

残った18切符は一枚。

水戸から一日で帰れない距離ではない。しかし、名所を多く擁する東京、神奈川、静岡を素通りするのはあまりにもったいない。

だからといって、もうすでに体力は限界に来ていたし、充実の旅を続けられそうにはなかった。

こうして想定と現実とのギャップを痛感し、一思いに帰路につくことに結論した。

水戸には空港が建設中であり、東京に近づくにつれ、町並みはコンクリートを多く含む建物に変遷していった。

上野、品川を過ぎると、首都であるにもかかわらず、なじみのない僕は東京に対するなんの感情も抱かなかったことに驚きの感情を抱いた。

横浜駅は立派そうだったのと、電車に乗りつかれたので、下車することにした。

百貨店そごうと一体になっており、ねんりん屋などの有名スイーツ店がケーキケースを並べていた。

丁寧に仕上げられたマカロンや老舗風情の羊羹などに買い物客が殺到していた。

ちょうど疲労がピークに達する頃合に電車は湯河原温泉に到着した。

僕は迷わずその地に降り立ち、温泉街まで歩を進めた。

箱根や伊豆とは違って、地味というのか渋いというのか、温泉街としての気取りがなく放浪者にはぴったりの湯治場ともいえそうな風情であった。

古くから知られる名湯であるから、泉質もやはりすばらしく、しっとりとからだを包み、からだの芯からあたたまり、なめらかな肌ざわりで疲れを忘れてしまった。

温泉にはじまり、温泉に終ったこの一人旅。

たくさんの経験と、見知らぬ日本北部の町。

日本全国、どこでもその土地の生活があり、人びとが並びくらしている。

そんな当たり前のことが、身近に実感として感じることができたことは僕にとって視野を広げることの意味を少し垣間見せてくれたような気がする。

こんなにのんびりと放浪に近いような旅を今後再びできるであろうか?

それは甚だ疑問である。

しかし、望めばきっと実現するであろう。

旅を住処とした松尾芭蕉のごとき、生粋の旅人はすばらしきかな。

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hajime

Author:hajime
ぜひ、高校生や大学生などの青年諸君に注意深く読んでもらいたい。むやみに多読する必要はなく、知識や思想の力があれば悩みに打ち勝つこともできるのだ。僕自身が高校時代から現在に至るまで苦悩と苦悶を繰り返しながら、懸命に人生について、「善く生きる」とはどういうことか、ということを真面目に考え、行ってきた事実をここに記している。その内容はきっと青年に役立つであろうと思わないではいられない。

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